第252回
天然鮎の比較宴会
今年も、天然鮎の会を開催することができた。
池袋の地酒割烹
「楽旬堂 坐唯杏」(らくしゅんだいにんぐ ざいあん)で、
数名の仲間と鮎を楽しんだ。
例年鮎の数が多すぎて腹いっぱいになりすぎるという声があり、
今年は少くない種類に絞ることになった。
色々考えて、
四国の代表の四万十川、
山陰の代表の高津川、
伊勢半島の代表の熊野川、
それに、長良川の上流の馬瀬川にあたってみることになった。
その結果、台風などの影響もあり、
四万十川、熊野川が入手できずに、
天然鮎は高津川、馬瀬川だけになってしまった。
それに、坐唯杏店主の武内さんが気を聞かして、
和歌山の「半天然養殖鮎」というのを取り寄せてくれた。
当日のお品書きは、
一、前菜 牛蒡唐揚。青唐
骨せんべい
一、椀物 鮎焼浸椀
翡翠茄子・火取鮎・蛇目胡瓜・忍生姜
一、鮎焼 島根県 高津
岐阜県 馬瀬
和歌山県 半天然養殖
一、炊き物 鮎飴炊き
小芋煮転がし
一、食事 鮎素麺
この日は、初めての趣向で、
3種の鮎をブラインドで食べることになった。
このうち、高津川の鮎は何回も他の鮎と食べ比べたことがあり、
また、馬瀬川は徳島の割烹で2度ほど堪能したことがあったので、
鮎当てにはいくらか自信があった。
前菜の骨せんべいは鮎の中骨をかりかりに揚げたもの。
まずは、奥播磨の熟成酒である「白影泉」の燗と合わせた。
香ばしく、かりっとした食感がいい。
鮎の焼浸椀は、鮎の出汁が深い落ち着いた香味を醸していて、
次の鮎焼きを期待させる。
さて、肝心の鮎3種の焼物。
まずでてきたのは、小振りの鮎。
頭からばりばりと骨ごと食する。
適度な腹の苦味と鮎独特の果物のような香りが調和している。
身は極めて繊細。
姿は高津川の鮎に似ていたが、
突出しているコクが感じられないので、別な鮎と断定。
諏訪泉純米酒「満天星」と合わせた。
次の鮎は、少し身がゆるゆるで、絞まっていない。
脂が多く大味。
そこそこの旨みはあるが、天然ではなさそう。
ということで、ここまでで、最初が馬瀬の天然。
次が和歌山の半天然養殖ではないかと推測が出来上がった。
秋鹿の山廃純米酒と合わせた。
最後の鮎は大振り。
姿、形からいうと以前徳島で食べた馬瀬の鮎に似ている。
うーむ、とここで、それまでの仮説が怪しくなってくる。
そして、まず頭をばりばり。
適度な硬さの骨は天然っぽいが、身がややゆるい。
お腹はとても濃いコクを感じる。
ここまで食べて、やっぱりこれは高津のだと認定。
この頃の酒は悦凱陣。
そして、店主の武内さんが来て正解を教わる。
全問正解だった。
最初が馬瀬、次が半天然養殖、最後が高津であった。
高津は一旦冷凍してあったものということで、
多少身がゆるかったことが瓦解。
その後の、鮎飴炊き、鮎素麺もとてもいい味にしあがっていた。
最後に馬瀬の鮎が二匹ほど余っていたので、
そちらで、骨酒を作ってもらう。
鮎を焼いて、そこに60℃の超熱燗の酒を入れたものだ。
酒は白影泉と竹鶴の2種類を試みたが、
白影泉がよくマッチしていた。
鮎の香ばしい香りが酒に移り、口のなかで天使が踊る。
竹鶴だと酒が強すぎて鮎の繊細な香味が負ける。
今年の天然鮎の会は鮎の種類こそ少なかったが、
至福の昼下がりであった。
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