|  第239回秋鹿のラインナップ 〜その2
 秋鹿のラインナップは学生の日本酒教育にはとても好都合だ。というのは、酒米の種類の違い、同じ酒米の育て方の違い、
 精米歩合の違い、速醸
  と山廃  という  造りの違い、 などの色々な造りの違いが
 酒質にどう影響するかということが確かめられるからだ。
 もともと、秋鹿に雄町のラインナップはなかったのだが、我々がぜひ雄町で造った秋鹿を飲んでみたいと
 奥裕明常務に要望したところ、
 翌年から赤磐雄町の種籾を岡山県から取り寄せて
 栽培を始めてしまった。
 もちろん、我々が要望したからという以上に、
 奥常務が雄町を栽培することに興味を持ったからだろうが、
 そのような柔軟さと、
 昔からの但馬流の伝統を守った
 谷淵杜氏の真摯な造りが合わさって、秋鹿は醸しだされる。
 山田錦と雄町の飲み比べに続いて、山廃を味わってみることになった。
 まずは、常温で楽しむ。
 山廃
  の造りは味に複雑さ、奥行きを加える。 名前ばかりの山廃造りの酒は
 嫌味な麹臭、雑味があることが多いが、
 きちっと
  日数をかけて造った山廃造りは 綺麗な味のなかに複雑さが潜んでいる。
 そして、それを燗にすると旨みが一気に前面にでてくる。
 学生のなかには、秋鹿の山廃のファンも多い。
 初めて飲む学生は、常温と燗の違いにびっくりしている。秋鹿、神亀、奥播磨、竹鶴などの
 麹造りがしっかりとしている酒は、
 冷酒では絶対に本来の味が楽しめない。
 少なくても常温、
 できれば、しっかりと45℃から50℃くらいの温度で
 燗をつけるべきだ。
 これが、いい酒にはぬる燗という誤解もあって、
 せっかく燗あがりがする酒の真価を発揮させないで
 提供する居酒屋も多い。
 融通のきく居酒屋で私がいい酒の燗を頼むときには、
 50℃まであげて、それを45℃くらいに冷ましてもらうことを
 お願いする。
 バードランドなどでは、
 その飲み方はすでに店側に知られているので、
 黙って燗といってもそのように配慮して提供してくれる。
 冷酒しか飲まない、あるいは、夏は暑いから冷酒が旨いと思っている人は、
 夏の暑い時季に飲む燗の旨さをぜひ経験してほしい。
 燗して飲めば酔い方もゆっくりで、
 冷酒のように最初は酔わなかったのが、
 急に酔いが回るということが無い。
 これは、最初はアルコールの吸収が温度によって違うことによる。
 冷酒では最初はあまり吸収しなかったのが、
 だんだん胃の中で温められてきて、
 急激に多量のアルコールを吸収するようになる。
 燗はほどよく酔うことができて、健康にもいい。
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