“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第224回
秋鹿の切れとイタリアン

秋鹿酒造は少なくても年に2回、
多いと5回くらいは訪問している。
春は苗床、
夏は田植えをしたばかりの田圃、
秋は黄金色に稔った稲穂、
冬には造りの現場が待っている。
先日の6月の終わりに訪問したときには、
ちょうど田植えが終わったばかりだった。

亀岡駅に奥常務が車で迎えに来てくれて、
そのまま田圃へ直行する。
今年は水不足で、秋鹿自営の無農薬田の嘉村壱号田も水が少なく、
撒いたばかりの米糠が目だって、痛々しく見えた。
これから、一雨ほしいところだ。

蔵に到着して、早速利き酒。
今年の造りの80%精白の山田錦と雄町の米違いバージョン。
山廃造り70%精白の山田錦と雄町の米違いバージョン。
60%精白の吟吹雪。
それに、豪華なラインが秋鹿の最高峰である、
嘉村壱号田の2001年から2004年までのビンテージごとの比較。

80%精白のものは、
昨年よりも山田錦と雄町の違いが少なく感じられた。
雄町は不思議な米で最初の年は癖があったが、
2年目からはまろやかになってきているという。
山廃造り70%は山田錦と雄町の差は歴然。
現段階では雄町のほうが味がよくでていた。

嘉村壱号田はいずれも冷蔵保存ということで、
2001年もあまり熟成が進んではいなかった。
造りとしては2003年が味のりが顕著。
この年は滓がよくでていたという。
私は嘉村壱号田を毎年の絞りで斗瓶に摂ってもらったものを
常温で保存しているので、その熟成具合を確かめるのが楽しみだ。
ただし、ここ数年は封印をとく予定はない。

試飲が終わり、奥常務夫妻と昼食に亀岡にある楽々荘へ向う。
楽々荘は京都の奥座敷の亀岡にある料亭で
拙書「世界一旨い日本酒」でも紹介した。
トロッコ列車の生みの親である田中源太郎の別邸だったもので、
緑豊かな回遊式池泉庭園に包み込まれたお屋敷で
旨い料理が食べられる。
その楽々荘が最近
イタリアンリストランテ・チンギアーレを開設した。
茶庭を見ながら鮎などの地元の食材を中心にした
美味しいイタリアンが食べられる。

フレンチもイタリアンも、
本国の地方によっても、また他国であっても、
その地方の食材の旨みを活かした独自の調理が確立するものだ。
現地の食材を使わないのは
本格フレンチ、本格イタリアンではないという意見もあるが、
料理とはもっと柔軟に色々な地方に溶け込んでいくものである。

チンギアーレはまさに亀岡の地の利を活かした極上イタリアンだ。
秋鹿の山廃純米大吟醸が、
バルサミコの酸味によく溶け込んでいて、快楽のランチだった。


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2005年6月30日(木)

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