“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第199回
日本酒の復活の予感

昨年までは異常な焼酎ブームが続いていた。
これは、現地の九州でも異常と感じられていたようだ。
焼酎とは逆に、日本酒は低迷して、なかなか立ち直れていない。
現在1500軒あると言われている造り酒屋は、
あと数年で1000軒を割るのではないかとも言われている。

日本酒の低迷の原因は、
大手の清酒メーカーを初めとした調味液添加の製法、
そして、地酒の蔵の拡大指向による品質低下、
さらに、吟醸酒ブームの後遺症の
香りを重視した酒造りといったところにある。

糖類や乳酸、グルタミン酸をアルコールに溶かして作られる
調味液添加の酒は、安く手間が少なくできるので、
戦後に大手だけではなく、全国の蔵元の酒蔵に広まった。
そもそも、アルコール添加は
太平洋戦争をきっかけに開発された酒造法で、
米不足を補い、安定した酒造りを行うための
緊急避難であったものが、米が余る時代にも続けられている。

大衆居酒屋では、
大手の調味液添加の酒しか置いていないことが多いので、
金をあまり持っていない若者は、
このまずい日本酒を飲んで、確実に日本酒嫌いになる。
地酒専門の居酒屋は概して、
提供する地酒の価格が高すぎるので、若者は通えない。

また、昔はいい造りをして美味しかった地酒も、
知名度があがってくると、生産量を拡大して、
品質が低下してくるものが多い。
大量に酒を造るようになると、
醪タンクも容量の大きいものを使う。
小さな醪タンクに比べて
発酵をうまくコントロールするのは難しくなり、
結果として酒の質は低下する。
そして、その酒の余計な味と、余計な香りをとるために、
大量の炭を使った濾過を行うことになる。
このような、原理で、生産拡大をした蔵の酒の品質は
低下することが多い。

そして、香りの高い酒が、消費者の酒量を少なくしている。
なぜかというと、料理に合わないからだ。
香りを抑えて、落ち着いた味わいをだした日本酒は
食中酒としては、ワインを凌ぐ相性の可能性がある。
それが、香りがあれば、
一口飲んだときのインパクトは強いが、
継続して飲むには飽きがくることになる。
また、香りの高い酒は、
酵母の種類を選択することで
比較的に容易に造ることができる。
そうすると、麹造りがおろそかになり、
味わいのしっかりとした酒ができにくい。

このようにして、
日本酒の消費量がどんどん少なくなってきている。
しかし、最近、
とてもしっかりとした味わいの日本酒を造る蔵が
徐々に増えてきた。
消費者も、香りよりは味わい重視で
日本酒を選ぶ人が増えている。
例えば、以前紹介した
純米無濾過生原酒が認知されてきている。
雑誌も食中酒としての日本酒を
取り上げることが多くなってきている。
このような現象から、
そろそろ日本酒が低迷期を脱して
復活してくれる予感がしている。
私が6月に出版する本も、
今後の日本酒の復活を応援したい
という思いのもとに書いたものだ。


←前回記事へ

2005年5月26日(木)

次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ