|  第114回鴨三昧
 西崎ファームの本社は、農場から車で5分ほどのところにある。こちらで鴨の屠殺と加工、出荷をしている。
 屠殺処理は首をひねって窒息死させる。
 血は抜けないように気をつけているという。
 大変清潔なところだった。
 その、本社の離れで鴨三昧のご馳走をしてくれた。最初はバルバリーの卸たばかりの肉に、合鴨の燻製。
 これを鉄板焼きにする。
 鴨に合う酒ということで、秋鹿の多酸酵母を用いた
 純米滓がらみ生酒「クレマンドノゼ」と、
 自家無農薬栽培山田錦を用いた
 純米大吟醸一貫造り「嘉村壱号田」を持参してきてあった。
 西崎さんに味見をしてもらったら、
 とても気にいったようで、いわれを説明する。
 まずは、バルバリー鴨を鉄板で加熱。「両面を炙るくらいにしてください、それで十分」
 と西崎社長の教えに従い、
 炙ったばかりのを大根おろしでいただく。
 ダイレクトに鴨肉の繊細な脂と肉の旨さが口の中に広がる。
 秋鹿は酸が高いので、とてもよく合う。
 合鴨の燻製も炙って食べる。
 こちらは、さらに脂分が皮についていて、
 そちらを噛んでいると、いくらでも旨みが溶け出してきてくれる。
 これだけでも満足していたら、鴨のコンフィーが提供される。コンフィーというのは、低温の脂で肉を煮た料理で、
 ゆっくりと火が通る分だけ、調理中に旨みが逃げない。
 このコンフィーがまた秀逸。
 燻製とコンフィーは西崎ファームに注文すれば送ってくれる。
 西崎さんとは、色々な食材の話がはずみ、
 それも、酒と鴨を美味しくしている。
 西崎さんは食生活をオーガニックにしていて、
 そちらの知識もなかなかだ。
 昔は、水鳥が卵を産むということも知らずに農場を始めたという。それが、いまでは十分な利益をあげる優良ビジネスになっている。
 課題は、現在会社で働いている数名の若者が夢を持てるような、
 将来のビジネス展開のアイディア探しだそうだ。
 しかし、同じ事業を拡大する気はないという。
 西崎ファームの将来を私も色々想像して、
 もうお開きかと思っていたら、
 さらに鴨の真髄を知る食べ方が待っていた。
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