“蕎麦屋酒”の著者がプロ顔負けの美味探求

第107回
タラバと毛蟹と蝦夷鮑

正月には、大学時代のハワイアンバンドの宴会を
メンバー持ち回りで行っている。
料理や酒、それに楽器を持ち寄って、
青春時代の懐かしい想い出に花をさかせる。
大学を卒業して以来続けているので、
もう、30年以上続いている。

今年は、その食材調達係りになったので、
小樽の三角市場のなじみの店から、
タラバカニ、毛蟹、蝦夷鮑を送ってもらった。
この会は1月3日に開催することになっているので、
この3日というのが食材調達には微妙で、
暮れのうちに獲れた魚介類は食べるまでの日数が長すぎる。
それで、その間水槽で活かせられる、蟹、鮑になったわけだ。

それと、鳴門の漁師の村公一君からは鱸を送ってもらった。
彼の獲った鱸は血抜きが完璧なので、熟成に耐えられる。

タラバは酒粕を使った蟹鍋にした。
蟹を捌くには、料理鋏が便利ではあるが、
蟹肉をつぶすような使い方になって、エキスが流れ出しやすい。
よく切れる出刃包丁で捌くのがいい。
今回は昆布と胴体部分を鍋で煮ておいて、
酒粕と醤油で味付け。
そこに野菜を入れ、最後に足を入れる。
煮すぎないように、短時間で足を食べる。
とても甘みのある蟹肉で、汁と絡める。
酒粕が蟹の旨みをさらに引き出す。
毛蟹は茹でて冷凍したものを仕入れたので、
食べやすく切り込みを入れて、そのまま食べる。
旨みという観点では
毛蟹は並み居る蟹の中でベストかもしれない。

鱸もとても旨みが乗ってきていて、美味。
大晦日にとどいたものを
元旦に内臓を抜いて熟成させておいたものだ。
淡白な中に上品な甘みが感じられる。
あわせた酒は宗玄。
能登の先端の珠洲市の酒だけあって、
魚介類には抜群によく合う。
宗玄は五千石程度の、結構大きい規模の生産量だが、
昭和蔵、平成蔵に分かれていて、
平成蔵を坂口幸夫杜氏が任せられ、
千石あまりの特定名称酒だけを製造している。
坂口杜氏は名能登杜氏として名高い、開運の波瀬正吉に学び、
いまでは、能登杜氏だけの鑑評会では
連続して首席を受賞している。
宗玄の優しさが、タラバ、毛蟹、鱸、それに鮑によくあった。
次回は蝦夷鮑について紹介したい。


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