| 第46回いい蕎麦屋とは
 拙書「蕎麦屋酒」の出版の反響は予想以上に大きく、色々な執筆、講演、出演などを依頼されるようになった。
 それはいいが、知人からことあるごとに
 一番美味しい蕎麦屋はどこか教えてくれと聞かれるのは困る。
 「蕎麦屋酒」では35軒の蕎麦屋をお勧めの店として紹介したが、それらは、どのような蕎麦屋のジャンルに入るか、
 また、店の主人の語りたいことは何か、
 どのような蕎麦と酒の楽しみ方をしたらいいのか、
 という観点で紹介しているだけで、
 蕎麦屋のランキングを示したわけではない。
 生半可な蕎麦通ほど蕎麦屋の優劣を論じたがるが、どのような観点で評価するか、
 どのような蕎麦を美味しいとするか、
 という個人の好みによって、蕎麦屋の評価は大きく違ってくる。
 細い蕎麦切りを薄めの汁で抵抗なく食べるのが好きな人もいれば、
 もっと腰のある蕎麦をきりっとした汁で食べることが
 蕎麦の醍醐味だと考えている人もいる。
 香りを命と思う人もいれば、
 味わいの深さが重要という人もいる。
 蕎麦に限らず、食べ物や酒を細かい点数で評価することは無理がある。
 ロバートパーカーやワインスペクター誌の
 百点満点のワイン評価をもとに
 ワインの値付けがされていることなど滑稽とも言えるが、
 日本でもその点数でワインを売ろうとする店が結構多いのは
 笑えない。
 点数をつけたがるのは米国の国民性で、
 ワイン取引でより伝統のある英国ワイン業界では
 点数づけを逆に批判している。
 蕎麦の話題に戻るが、ここでは、いい蕎麦屋のわかりやすい尺度を紹介しよう。
 原材料である蕎麦粉の調達方法に情熱を持っていることが、
 一番肝心だが、プロでも一部しか知らない、
 いい蕎麦粉を調達するために考慮すべき原理と
 それを具現化する方法を考察し、
 それを実践している蕎麦屋を紹介する。
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