第2回
美味しさの原点は命にあり
味覚は人間の有する他の感覚に比べて、
特殊なものと捉えている人が多い。
生きていくために必要なセンサーである
視覚、聴覚、嗅覚、触覚と違い、
味覚は生活を贅沢にするためのもののように思われている。
しかし、味覚も、
もともとは人間が動物として生きていくために必要な
大事な感覚であった。
嗅覚と合わせて、腐敗物を判別し安全な食べ物を選択する役割、
足りない栄養素、カロリーが多く含まれている食べ物を
抽出する機能が備わっていた。
例えば、脂を旨いと感じるのは、
生きるために必要なカロリーを摂取させるためである。
京都大学の「グルメ」を科学的に捉えて研究している
伏木亨教授は、カロリーゼロの脂を開発中だ。
味はほとんど普通と変わらない
カロリーゼロの脂をねずみに与えると、
最初は好んで食べるが、しばらくすると食べなくなるそうだ。
これは胃がカロリーを判断して、
脳にこの脂は食べても無駄だという信号を送るからだ。
カロリーゼロの美味しい脂が開発されれば、
全国ダイエット列島の日本では
画期的な発明と認知されるはずであるが、
本能を誤魔化すことはなかなか難しいようだ。
人間でも赤ちゃんのときには、
足りない栄養素の入っているものを積極的に食べるという本能は
まだ持っている。
それが、成育期間に、スナック菓子、インスタント食品、
ファーストフードなどを初めとした
添加物いっぱいのものを食べることによって、
味覚センサーに狂いが生じてくるのだ。
本当の美味しさとは、自然の恵みのなかにある。
天然の旬の食材は身体を健康にしてくれる。
無添加の自然食の生活を続けると、
食材のなかに秘められた本当の味がわかってくる。
医食同源という言葉もあるように、
美味しさの原点は命なのである。
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