| 第75回『太極導引』之柔 その一
 導引が鍛錬する内容は“引体以柔、導気以和”であります。その鍛錬内容のひとつでもある
 身体を「柔」に導くことは
 『太極導引』を行う特徴でもあり、目的でもあり、
 運動方針でもあります。
 身体を「柔」に導くというのは、身体を柔らかくすることではありますが、
 より具体的な理解となると、
 ストレッチの練習と混同している人が多いようです。
 もちろん『太極導引』が鍛錬する「柔」にも、「柔軟」の意味は当然あり、
 かたい身体を柔らかくするようなことはあります。
 しかし、最も追求している鍛錬の目的とは
 柔軟にすることよりも「柔和」という身体状態です。
 これは臓腑器官の働きが穏やかになるようにすることです。
 健康状態について漢方医学の考え方では、臓腑や器官の働きは穏やかで、和らいだ状態にあることが
 より根本的なことだと思います。
 生命を維持し、さらに長らえるためは
 「気血」の量は充足し、「気血」の巡りは安定している
 という状態が必須となります。
 そして気血の状態は体内の臓腑の働きに基づいています。
 ですから、臓腑器官が穏やかに働く状態は
 まさに健康と長寿のもとであり、
 『太極導引』鍛錬の目的であります。
 では、いかにして身体を「柔」に導くのか。そのための鍛錬の方法としては
 『太極導引』では
 「松」と「静」の二点について行います。
 |