中国人と日本人 邱永漢

「違いの分かる人」へのヒントがあります

第101回
「大中華経済圏」はもうそこまで来ている

日本人は土地や建物などの不動産に異常な執着を持っている。
中国人はその日本人よりももっと不動産にこだわる。
アメリカ人から見たら、
ほとんど病的に見えるのではないかと思いたくなるほどである。

アメリカやカナダに行くとすぐにもわかることだが、
香港人や台湾人の多く住む西海岸では
これらの人々が不動産を買い漁る。

ハイウェイ沿いのドライブ・インは
ほとんどが中国系アメリカ人のものだし、
チャイナ・タウンの不動産は
他の地域より割高であるにもかかわらず常に人気が高い。

海外にいる中国人は比較的お金を持っているし、
かたまって一つのところに集まりたがる。

だから、アメリカ中が不況に見舞われても、
チャイナ・タウンの不動産は下がらない。
ふだんは売り物のないところだから不況によって売り物が出れば、
すぐにも買い手が現われる。

土地に対する執着ぶりは、日本人の場合、
農民の土地に対する執着ぶりを連想させる。
これに対して中国人のそれは商人の発想である。
農民はそこで働くために土地を手に入れるが、
商人は収入を得るために土地を買う。

商人だからお金にならないとわかれば絶対に手を出さないが、
反対に短期間に値上がりしそうだとわかれば、
どんな冒険も辞さない。

競馬、競輪、競艇と、日本でも賭博好きは多いが、
とても中国人の足元にも及ばない。
少し前まで台湾には大家楽(みんなで楽しもう)
という賭博があった。

政府の発行する愛国奨券という宝クジがあって、
毎週当たりクジが発表される。
その当たりクジの最後の二桁の数字を当てる私設宝クジで、
胴元になった者がその一割をいただき、
あとのお金を当たりクジに支払う。

台湾中がこのマネー・ゲームに熱中して、
政府宝クジの発表日になると、
発表を聞きに出かけてしまうために
事務所や工場の中までガラガラになってしまう。

もともと私設賭博だから、
台湾では警察を総動員して取り締まったが、
どうしてもボスがつかまらない。
取り引きの現場を押さえられ、
現行犯を追及しても決して泥をはかない。

たいていは女性が雇われて働いているが、
ふだん月に一万五千元で働いているとして、
留置場に入れられると、
その日から特別手当てがついて月三万元の収入にはねあがる。

とてもそれだけの収入を裟婆では稼げないから、
人々は喜んで身代わり犯人を買って出る。
捜査はそこでとまってしまう。

業を煮やした取り締まり当局は、
いろいろ協議した結果、
愛国奨券があるから大家楽があるのだとばかりに、
思い切って愛国奨券そのものを廃止してしまった。





←前回記事へ

2012年11月17日(土)

次回記事へ→
中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」

ホーム
最新記事へ