第99回
中国人と韓国人の区別もつかない日本人 その3
日本でもそうだが、
経済を知らない政治家や官僚が操縦席に坐っていると、
エンジンの性能を無視してアクセルを踏むから、
景気のよい時も不景気の時もどちらにも必ず行き過ぎる。
その調整時期を私は九四年と見ているが、
このまま過熱状態が続くと、
九四年をまたずに手綱が締まる可能性も出てきた。
生活物資はともかくとして、
鉄やセメントなどの建築資材が短期間に
五割も値上がりをしており、
それがインフレを誘えば、
政府としても金融引き締めに踏み切らざるを得なくなる。
今次の景気と以前と違うところは、
建設事業の大半が外資の導入によるものであり、
中国側は主として土地を提供しているだけであるから、
単純に外貨の不足にはつながらないだろう。
世界中が不況の様相を呈しているなかで、
外資を導入して外国から建材を輸入すれば
(外貨で購入する場合は輸入税は無税という特典もあるし、
現物出資という道もひらかれているので)、
中国大陸における投資ブームが周辺諸国や
世界的レべルにおける景気回復の牽引車になることも考えられる。
さしあたり香港と台湾にそのきざしが見られる。
だから「ブーム即一国内における外貨不足とインフレ」
という従来のパターンでものを考えると間違える可能性もあるが、
建設ブームがきっかけになって建材の不足を生じ、
国全体が成長のスピードをおとさざるを得ないことに変わりはない。
それはたちまち国内における物不足をひき起こすから、
このままの状態で放置しておけなくなることは目に見えている。
と言って成長経済への道がストップしてしまうわけではない。
デコボコ道を走る「成長号」
というバスに乗り込んでいるようなものであるから、
道が悪いために頭をバスの天井にぶっつけたりすることはあっても、
一本道をひた走りに走ることに変わりはない。
こうした動きを前にして、
海外の中国人たちはいち早くバスに乗り込み、
日本人の大半はいかにも疑わしそうな目をして見守っている。
どうしてこれだけの違いが生じてしまったのであろうか。
いままで述べてきたことからもおわかりのように、
それは隣り同士で、
お互いに影響しあう複雑なかかわりを持ってきたにもかかわらず、
日本人がほとんど中国人を理解していないからであり、
同じように、中国人としても、
戦争の被害者としての立場でしか
日本人を見ていないからであろう。
このことは、たとえば、
九二年十一月の天皇の訪中にあたって、
日本の政治家や文化人の中から
あれほど反対の声があがったのを見てもわかる。
新聞雑誌に載った反対意見をまとめてみると、
(1)天皇を政治的に利用されることに反対、
(2)天皇が謝罪させられるのが心配、
(3)共産主義、とりわけ人権間題で世論の批判を浴びている
現中国政府に対するアレルギーの三つに要約することができる。
旧蒋介石政府の側に立って、
あるいは、明治以来の対中国観に基づいて、
自分らを正当化する意見も見られる。
これらの反対意見に接して、
改めて日本の識者と呼ばれる人たちの
外交オンチぶりに本当にびっくりした。
これらの意見をきけばきくほど、
もしかしたら日本人はすぐお隣りの韓国人と、
そのまた隣りの中国人の区別もつかないのではないかと
思いたくなる。
また共産主義体制というところだけを見て
北朝鮮と中国を一緒くたにしているのではないか、
と首をかしげたくなる。
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