第74回
ふだんの日はショー・ルーム、バーゲン・セールが本番
中国人ほどお金に敏感な国民は他に見たことがない。
金持ちだけがそうなのではなくて、
貧乏人も全く同じようにお金には鋭く反応をする。
どこに住んでいても中国人の金銭感覚は共通している。
中国大陸にいても、香港、台湾にいても、
あるいは、サンフランシスコやニューヨークにいても、
中国人は皆同じ反応をする。
まず第一に、節約の鬼である。
無駄金はいっさい使わない。
どうしてそういうことになるかというと、
国があてにならず、戦乱や飢饉のなかをにげまわってきたので、
お金しか頼りにならないことが身に沁みているのである。
今日、東南アジアで名の知られた華僑はほとんどが、
いわゆる白手成家(裸一貫で成功した人)
に属する人たちである。
雇い主から前借りをして年季奉公に出かけた人もあれば、
親戚や同郷の先輩をたよって、
タイとか、マレーシアとか、インドネシアに
出稼ぎに行った人もある。
共通していることは、額に汗をして
貧乏のどん底から這いあがってきたことであり、
わずかな収入の中から節約して
貯蓄をしてきたことである。
元手をつくらなければ将来、金持ちになれないことを
中国人ほど実感している国民はないのである。
第二に、中国人の貯蓄率は滅法に高い。
貯蓄とは、毎月の収入の中から
使い残したお金を残しておくといったノンキなことではなく、
使いたいお金を我慢して優先的に残しておくことである。
中国人の社会では貧乏人も貯蓄をするが、
お金持ちはもっと貯蓄に励む。
台湾における貯蓄性向は、一番高い時で、
収入の38%であった。
いまは28%におちているが、
台湾の政府は国民の金遣いが荒くなったと言って心配している。
年収の11%しか貯蓄していない日本人を
貯蓄のしすぎと非難するアメリカ人がきいたら、
ひっくりかえって驚く数字ではないか。
貯蓄性向は国民性を反映するものであって、
収入の多い少ないとはあまり関係がない。 |