第61回
日本人の自己批判、中国人の自画自讃 その3
政府だけがそうなのかと思ったら、
民間企業の経営者も同じである。
台湾の化繊工場は、欧米から技術導入をした
日本の化繊会社のそのまた亜流であるにもかかわらず、
自分らは東レや帝人の力を借りずに工場をつくっている。
機械は西ドイツから輸入しているが、
お金がかからないように工夫したので、
工場の建設費も日本の三分の一ですんでいる。
人件費も台湾は日本の三分の一だから、
競争すれば日本に打ち勝てる、と自信満々のことを言う。
景気がよくて、品不足の生じている時は
確かにそのとおりのことが起こる。
しかし、台湾製のナイ口ンやテトロンは所詮二級品で、
品不足で引っ張り凧の時はよいが、
少しでも過剰生産におちいると、
値が下がってコスト割れになる。
日本の繊維会社のように何回も不況の波を
くぐってきた蓄積のある会社と違って、
底が浅いからコスト割れが続くと、
すぐにも手形がおとせなくなって倒産に追い込まれる。
前期は八割も配当した人気株が、
今期は不渡りを出して株価が十分の一にも、二十分の一にも下がる。
不渡りを出せば、日本の会社ならそれでおしまいだが、
そこがまた日本の会社と違う。
不渡りによって会社を倒産させてしまうと
機械や設備は二束三文になってしまうから、
債権者は債権がとれなくなってしまう。
それくらいなら、債権はそのままにしておいて、
もう一度お金を集めて仕事を再開させる。
台湾にも会社更生法があって、
会社の債務を棚上げにしてくれるが、
面白いことに会社を倒産させた張本人をまた同じポストに就ける。
そのほうが会社の債権債務の内容もよくわかるし、
経営にもなれているからだと言う。
さらにもっと不思議なことは、
倒産になっても、上場は廃止されず、
不渡りのまま株の売買が行われる。
たとえ不渡りを出しても株主はまだ株を持っているし、
値打ちがなくなったとはいえ、
売り買いをする人がまだいるのだからという
理由によるものだそうである。
考えてみればそれなりに理窟のあることで、
日本人のやり方だけがいつも正しいとは言えない。
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